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『万事快調 オール・グリーンズ』感想:楽しくも切ない“不適切”な青春

『万事快調 オール・グリーンズ』ネタバレ感想・考察。ラストの解釈、朴秀美は生存したのか、といった点について解説しています。

『万事快調 オール・グリーンズ』感想

第28回松本清張賞を満場一致で受賞した、波木銅の同名小説が原作。

工業高校に通う女子高生を演じた、主演三人の演技が素晴らしく、なかでも出口夏希の不良っぽいキャラクターは新鮮かつハマっていました。

地方都市の若者が抱く閉塞感を、真摯でありながら軽薄さも感じられる絶妙なトーンで描いた青春ムービーです。

 

あらすじ

ラッパーを夢見ながらも、学校にも家にも居場所を見いだせずにいる朴秀美。陸上部のエースで社交的、スクールカースト上位に属しながらも家庭に問題を抱える映画好きの矢口美流紅。大好きな漫画を自己形成の拠り所としている、斜に構えた毒舌キャラ・岩隈真子。未来の見えない田舎町で、欝々とした日々を送る3人の高校生は、自分たちの夢をかなえ、この町を抜け出すためには一獲千金を狙うしかないと考え、同好会「オール・グリーンズ」を結成。ある禁断の課外活動を始めるが……。

映画.comより一部抜粋

グレてはいないが、品行方正とも言い難い高校生像

主役の3人は、不良っぽい見た目ではないが、喫煙や飲酒を平然と行うなど、うっすらガラが悪い設定の高校生。

いかにも地方都市の工業高校って感じの塩梅がいいですね(もちろん現実に、こんな美少女はいないというツッコミはなしで)

彼女たちは、三者三様の問題を抱えており、それらを解決する現実的な手段は「大金を手にして町を出る」ということ。

あまりに短絡的すぎて、絶対どこか間違っている気もするけど、このあと説明する演出の妙もあいまって、この価値観を違和感なく受け入れることができました。

とりわけ、主人公の一人である矢口美流紅(出口夏希)が「何か起こさないといけない」という思いに駆られるエピソードは印象的でした。

技能実習中の事故で小指を失う、という取り返しのつかない不幸であっても、「何も起こらないよりはまし」という考え方をするのは、若さゆえの近視眼による絶望を、鮮烈に現していたと思います。

彼女たちと観客を、共犯関係にする仕掛け

本作では、若い三人の感じている「絶望感」を観客と共有する必要がありました。

そうしないと、後に彼女たちが手を染める大麻栽培という犯罪行為を、ワクワクしながら観ることができなくなってしまうからです。

序盤に描かれた、交差点で見知らぬ女性が轢かれる事故シーンは、彼女たちの絶望感を観客に分からせるための演出として実に効果的だったと思います。

三人はその事故を、交差点の四つ角のそれぞれの立ち位置から目撃します。

のちにニュースで、轢かれた女性は死亡したこと、そして彼女が浮気した旦那を殺して、自らも死のうとしていたという事件の背景が報じられます。

 

この亡くなった女性は、彼女たちにとって、地元における「絶望のロールモデル」なのです。

この先、地元に残る選択をした場合、彼女たちにどんな悲惨な未来が待っているか、観客に対して提示されるとともに、物語上で、彼女たちが「このままではマズイ」と確信するためのきっかけとしても機能しています。

大人目線だと、こんなものは例外的な不幸にすぎないと理解できますが、活動範囲の狭い高校生にとって、この事件が将来に対する不安の引き金となることには、一定の納得感がありました。

大麻を栽培し始めてからのほうが、青春ムービーぽくなる皮肉

当初、彼女たちの日常は、退屈で希望のないものとして描かれています。

ところが、町を出る決意をして、学校の屋上で大麻を栽培しはじめたことで、急激に三人の日々が輝き始めるのは、最高に皮肉が効いていました。

これまで友達付き合いも希薄だった彼女たちが、三人でつるんで、どこにでもいる女子高生のように放課後を楽しんでいる姿は、楽しい中に微かな憂いも感じられて、非常に映画的な光景になっていたと思います。

ポスターのキャッチコピーでは「不適切な青春」と評されていましたが、まさしく、だと思いました。

ラストシーンの謎。朴秀美は、屋上から飛び降りてなぜ無事なのか

最後、爆発とともに朴秀美(南沙良)は屋上から飛び降りて、そのまま駆けていきます。

これは多義的な解釈が可能になっていて、もちろん、着地した場所がクッション的な役割を果たして無傷と受けとることもできます。

映像的にはそのように描かれていました。

 

一方で、この場面は、飛び降りた朴秀美を目撃した美流紅が、大麻により幻覚を見ていたと考えることもできます。

体育館で煙を吸った生徒たちは、自分の欲望を解放しているように見えました。

美流紅も同様に大麻の影響下にあったとすると、彼女が朴秀美に、「因果応報なんてない、逃げきって欲しい」と話していた通り、その願望が投影された幻想だったとしてもおかしくはないと感じます。

その場合、朴秀美は屋上から飛び降りていないとも考えられるし、あるいは爆発に巻き込まれて死んだのか、普通に階段で逃げたのか…

もしかしたら、飛び降りてはいるが、地面に叩きつけられて死亡した可能性も考えられます。

 

「逃げ切る」という言葉のニュアンスには、自死による逃避も含まれます。

ラストの疾走シーンがやけに現実離れして描かれていたことから、あれは現実ではなく、朴秀美自身が最後に見た幻想だと想像しました。

ふいに、海岸でたわいない会話をしていたときの映像がインサートされるのも、走馬灯のような不吉さがあります。

バッドエンドを裏付けるように、エンドロールでは、三人のその後のありそうな後日譚が提示されますが、最後に美流紅が「そんなわけねーだろ!」と言い放って終幕することからも、現実はより悲惨な結末であることが示唆されているように感じました。