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『ブゴニア』感想:“大企業のCEO”と“陰謀論者”と“宇宙人”は似たもの同士?

映画『ブゴニア』感想。ネタバレなし(前半)・ネタバレあり(後半)です。ブゴニアの意味や物語の構造についても触れています。

『ブゴニア』感想

タイトルの「ブゴニア」とは、古代ギリシアで信仰されていた、牛の死骸から蜂が自然発生するという迷信のこと。

ヨルゴス・ランティモス監督の作品は、タイトルが作品を象徴する傾向が強めですが、今回も果たしてそうなっていました。

 

この映画、種明かしすると初見の面白さを損なってしまう作品だと思ったので、「前半はネタバレなし」「後半はネタバレあり」で感想を書いています。

 

あらすじ

世界的に知られた製薬会社のカリスマ経営者ミシェルが、何者かに誘拐される。犯人は、ミシェルが地球を侵略する宇宙人だと固く信じる陰謀論者のテディと、彼を慕う従弟のドン。2人は彼女を自宅の地下室に監禁し、地球から手を引くよう要求してくる。ミシェルは彼らの馬鹿げた要望を一蹴し、なんとか言いくるめようとするが、互いに一歩も引かない駆け引きは二転三転する。やがてテディの隠された過去が明らかになることで、荒唐無稽な誘拐劇は予想外の方向へと転じていく。

映画.comより一部抜粋

シンプルな会話劇を「映画」にする演出力

物語は、ブラック&シュールなコメディ?スリラー?というカオスな展開。

陰謀論者の男が、製薬会社のCEOを宇宙人だと思い込んで、誘拐事件を起こす筋書きです。

ともすれば安っぽい会話劇になってしまいそうな設定にもかかわらず、舞台美術が真に迫っており、チープさを感じさせません。

特に、会話劇の舞台となる、兄弟の住む一軒家の美術・インテリアは古きよきアメリカを感じさせる味わい深いものでした。

高画質のビスタビジョンで撮影されていることも相まって、動きの少ないシーンなどでは、宗教画のように厳かな雰囲気が感じられる場面もあったほど。

全体的に、ややシンメトリックな構図が意識されており、映像に心地よい連続性も感じられました。

陰謀論者と大企業のCEOが、等しく「うさん臭く」見えてくるのが面白い

陰謀論に取りつかれたテディは、製薬会社の女性CEOミシェルを誘拐して脅迫します。

彼らは、彼女が宇宙人だと信じているけれど、もちろん最初はバカげた妄想にしか思えません。

ところが、会話が進むうちに、ミシェルは大企業のCEOという立場を盾に彼らを脅迫し、それが無理だとわかると懐柔しようと謀略を巡らせます。

二枚舌な態度をとる姿を目の当たりにすると、だんだんと彼女に対しても不信感が芽生えてきます。

 

こうして、陰謀論者の誘拐犯と大企業のCEOが、等しく「うさん臭く」見えてくる様が、実に面白いのです。

閉鎖環境で長い会話劇が展開され、絵替わりが極めて少ない作品にも関わらず、目の前の状況に対する印象が二転三転し、最後まで緊張の糸が切れないのも見事。

これは脚本もですが、真に迫った舞台美術の作り込みと俳優の演技によるところが大きいと感じました。

(ネタバレ)まさにブゴニアな結末

ここからは話のオチも含めて少し語ります。

結論、テディが信じる、製薬会社のCEOが宇宙人だという陰謀論は、実は当たっているのでした。

プロセスは食い違っているけど、彼女が宇宙人であり、地球人の生殺与奪を握っているという点についてはズバリ的中していた、というトンデモなオチが示されます。

しかし、劇中で一日おきにインサートされる、地球を俯瞰したような意味ありげなビジュアル。そして、最初に説明した「ブゴニア」という言葉の意味が、きれいに結末につながるために、突飛な結末にも関わらず違和感はありません。

また、ミシェル役のエマ・ストーンが、宇宙人と言われたらそうかもしれないという異質な雰囲気を常に醸し出していたことも、結末の裏付けとして効いていました。

 

ミシェルにより地球人は死滅しますが、エンドクレジットでは、波の音や鳥の鳴き声など、地球環境が再生していくことを予感させるBGMが流れます。

タイトルの「ブゴニア」は、CEOが宇宙人であるという陰謀論が的中していたことにもかかっていますし、人類が死滅すると地球が再生するという、歪んだ因果にもかかっています。

この皮肉たっぷりな大オチは、物語の置き土産として実に気が利いているし、ヨルゴス・ランティモス監督らしさも感じるものでした。

最後に一言

どこで切り取るかで、その人の印象がまるで違って見えることを、エマ・ストーン演じるミシェルは体現していました。

冒頭からラストにかけて、彼女への印象は激変しています。

誰しもが抱く、常人離れした大企業のCEOを「自分と同じ人間だとは思えない=宇宙人のようなものである」と思う、素朴な感情が観る人の背景にあるからこそ、本作はCEOvs陰謀論者の対比が成立していましたし、ラストの突飛なオチにも不思議と違和感がなかったのだと思いました。

 

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