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映画『キャンドルスティック』感想:FX指南小説が原作だが、原型を留めないキメラ的な脚本になっている。

『キャンドルスティック』ネタバレ感想・考察。原作と映画の違いなど、シナリオ構成について解説しています。

この映画、観れないほど酷いとは言いませんが、率直に言って脚本が散らかりすぎに思えました。

ただ、映画のあらすじと、原作のあらすじを比較してみるとさもありなんで、原作はシンプルなストーリーなのに、それにAIとかハッキングとか、共感覚とか、日本と台湾の海を跨いだ因縁・陰謀という、映画っぽい筋を作るための要素がゴテゴテとデコレーションされている。

まずは両者のあらすじを以下に載せます。

 

映画のあらすじ

ハッキングによる株価操作の罪で刑務所に収監された天才ハッカー・野原の前に、FXトレーダーの杏子が現れる。

一方、サイバー大国・台湾の大企業幹部リンネは、野原の卓越した技術を利用してFX市場で巨額の利益を得ようともくろむ。その作戦は、金融市場の番人であるAIを騙すことだった。

決行日は、日本に新天皇が誕生し金融機関が警戒を緩める2019年5月某日。杏子は野原に自らと同じ“共感覚”を感じ取り、計画をサポートすることを決意。かつての仲間たちも次々と呼び戻されるが……。

原作のあらすじ

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夫がリストラされ、専業主婦だった杏子は働きに出ることになる。

仕事先で出合ったFX(外国為替取引)に興味を持ち、さっそくはじめた杏子だったが、投資をギャンブルだと嫌う夫に打ち明けられずにいた。

夫とのすれ違いに苛立つ一方で、杏子に思いを寄せるFX仲間の野原に心が揺れてしまう…。様々な葛藤を経て、妻として、女性として、トレーダーとして杏子は成長していく。その先に待ち受ける杏子の幸せとは…。
FXを通して幸せを掴む、読者体験型サクセス・ストーリー。

あらすじ以外のすべてが破綻している

AIを騙すための作戦を準備していく段階で、仲間内でしょうもない小競り合いやかけひきがあるが、間延びするだけで進行のノイズになっていたり、AIを騙すための仕組みが素人レベルの発想だったり。
物語を引っ張る力が、いまひとつ不足していました。

結局は、野原(阿部寛)の天才的なプログラミング技術という設定の力で話を通すだけになっていて、観客には有無を言わせない強引な展開になっている。

杏子(菜々緒)の共感覚という設定も、野原と杏子が惹かれ合う理由くらいにはなっているが、深堀りする描写も特にないので、物語展開にほとんど生かされていません。

原作が思想レベルで改変されており、もはや原作とは呼べない

だいたい、原作は誰もがFXを学んで投資に踏み出せるための指南本なのに、映画では「不正して儲ける」「共感覚という超人的な感覚でチャートに向き合うことで売買タイミングを見極める」という、
原作の思想と真逆の世界を描いており、リスペクトを欠いていると言わざるを得ない。
原作としての機能が失われているレベル。

キャラクターの魅力があったことだけが、救い

主演のみなさんは、揃って色気のある演技で、キャラクターにはとても魅力を感じました。

野原役の阿部寛も相手役の菜々緒も良かったし、菜々緒にフラれる津田健次郎も良かった。

津田健次郎が、嬉々としてメロンと数式の関係を語る描写は、シュール&コミカルな気持ち悪さがあり、なかなか面白かったです(笑)

変な脚色をせずに、もっと原作シナリオをリスペクトする方向で、昨今の投資ブームの世相を取り込む形で脚本化してくれていたら、なかなか面白いトレーディング・コメディになった気もするけどなぁ…。