『教皇選挙』のネタバレ考察記事です。ラストの展開について、私なりの物語の読み方を解説しています。

アマゾンプライムで教皇選挙が配信開始しました。
実は公開時に劇場に観に行ったのですが、観終わった直後、どうしても引っかかる違和感が残っていたのです。
今回、改めて配信で見返してみて疑問が晴れたので、その辺りを中心に自分なりの解釈を書いていこうと思います。
最初から完全にネタバレで書くので、まだ観られてない方はご注意ください。
本作は、ミステリー要素が強いので、まずは予備知識ゼロでみたほうが楽しめると思います。
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もう一度、見返したくなる秀逸な仕掛け

本作は、現教皇が亡くなり、時期教皇を決める教皇選挙(コンクラーベ)が開催されるところから物語がはじまります。
部屋に置かれたチェス盤を見て、生前の教皇との思い出を懐かしみながら、旧友のベリーニは主人公のローレンスにこんな話をします。
「教皇は常に8手先を読んでいた」
ここでの会話が巧妙な伏線になっていて、これが本作の最大の疑惑となります。
コンクラーベを有利に運ぼうと候補者が画策するなかで、誰が嘘つきなのか、誰が信用できるのか、選挙を取り仕切る主人公ローレンスの目線から選挙の行方が描かれる、ミステリー展開が秀逸です。
まさしくユダ(裏切り者)は誰かという話ですね。
そして最後に、そのコンクラーベの結果がすでに亡くなっている前教皇によって、作為的に操作されていたことが明らかになるという、これまで見てきたものが大きく転換させられる二重構造になっています。
ここまでが教皇選挙の“表向き”のミステリー的な面白さだと言えます。
そして、ここからが教皇選挙がスリラーだとも称される所以であり、1回目に劇場で観て、気になっていた部分への言及にもなります。
ラスト30分、神の一手で盤面が覆る

物語の中盤から終盤にかけて、アデイエミの性的不祥事やトランブレの違法行為をローレンスが暴くことは、まさしく前教皇の読み通りだったと思われます。
少なくとも最終投票の直前までは、前教皇の思惑通りにことが進んだと考えています。
ところが、最終投票でローレンスが自らの名を記載した用紙を投じた瞬間に、突如、建物外での爆発により、講堂内に瓦礫が降り注ぎ投票が延期されます。
この爆発によって、前教皇がお膳立てした盤面が覆されたと感じました。
というのも、このあとの展開があまりにも急展開かつトントン拍子なんです。
▶ここではローレンスが教皇に選ばれる流れだった
▶でも、予想外の爆発で中断された
▶中断により、ベニテスが演説する時間が生まれた
▶演説により、枢機卿たちの心が動いた
▶ベニテスが教皇に選ばれた
これらの流れはすべて、“偶然にしては都合が良すぎる”し、前教皇の計画にしては“出来すぎている”と思いませんか。
あの爆発による投票の中断には、“神の意思”が介在していたのだと、解釈しました。
前教皇の歪んだ信仰心

前教皇がベニテスを買っていたのは事実だと思います。
ところが、ベニテスは女性の身体的な特徴を備えた人物で、教皇になるには教義上ふさわしくない問題を抱えていた。
ただし、前教皇は、「手術をして女性的な機能を取り除けば問題ない」という考え方をされていました。
この点に猛烈に違和感を感じました。
前教皇のなかに、歪んだ信仰の影を見てしまった気がしたんです。
しかし、結果的に、ベニテスは手術するのをやめます。
神にいただいた体にメスを入れるのは良くないだろう、という考え方です。
時系列的には、彼が手術するかどうかのタイミングで、前教皇は亡くなることになりますが、実は、教皇は亡くなる少し前に、彼が手術をしなかったことに気が付いたのではないか。
そして、やはりベニテスは時期教皇にふさわしくない、と考えたんじゃないでしょうか。
それでローレンスに判断をゆだねようと思った。
前教皇はもともと、ベニテスが選出されるための最後の一手を講じるつもりだったが、上記の理由でそれをしなかったのかもしれません。
爆発で投票が中断され、そのあとベニテスの演説があったから、枢機卿たちの心が動きました。
爆発がなく最終投票が行われていたら、すんなりローレンスに決まっていた可能性は高い。
前教皇は最終的に、ベニテスではなくローレンスを次期教皇に推すことに決めていたと解釈すると、ベニテスが教皇に選ばれるにはあと一手足りない状況となっていたことへの説明もつくのではないか。
イエスを彷彿とさせる、ベニテスの演説
前教皇のベニテスへの指示は“信仰とは何か”を考えさせられるものです。
そして、そんな前教皇へのカウンターとして、ベニテスの聖職者の鏡であるような発言や振る舞い(食事の前の丁寧な祈りなど)が、未来の教皇としてふさわしく感じられてきます。
また、最後にベニテスが演説するシーン。
彼を他の枢機卿たちが取り囲む構図は、イエスとその弟子たちのようで、ますますこの流れに“神の意思”を感じずにはいられません。
ミステリー×ホラー作品で、ぜんぶロジックでミステリーとして説明できているように見せて、あえて説明できない謎を1個だけ残すことでホラー要素を際立たせたりするじゃないですか。
本作はそれと同じ構造に思えます。
すべては前教皇の意思のように見えて筋を通した説明もされるのですが、いま書いたように一部説明がつき切らない所があって、その解き明かせない部分こそが、今回のコンクラーベに神の意思が介在したことを示唆しているようにも思えました。
前教皇は8手先を読めたかもしれないけれど、神はすべてをお見通しだったというのが結論です。
おそらくローレンスも、この一連の出来事を通じて、そこに神の意思を感じたのでしょう。
だからこそ、物語の冒頭では信仰に疑念を感じていたローレンスが、最後には信仰を取り戻したように見えたのではないでしょうか。
