映画「ドールハウス」ネタバレ感想・考察です。あの結末に至った理由を、実際のシーンを挙げながら具体的に解説します。

前半はネタバレなしでいきます。
※ネタバレ解説はここから飛べます
まず言いたいのは、この映画の予告編はもったいないですよ。
ベタなホラーものに見えます。
でも本作は、ありがちな「人形が出てくるホラー」ではないんです。
サスペンスやスリラー的な映画として見ても、よく出来た映画です。
普段、ホラーを避けている人が観ても楽しめる内容だと思います。
100%分かっているのに、驚かされるシーンがある

もちろん、ホラー的な見どころもしっかりあります。
ビクッとさせられるようなシーンが何回も出てきます。
特に序盤の洗濯機のシーンは要注意です。これネタバレじゃないですよ。
初見でも、これは来るぞ!って100%分かります。
完全にわかってはいたんです。これ、絶対くるじゃんと。
だから身構えてみていたはずなのに、それを超えてくる演出でビックリさせられます。
たぶんもう一回観ても、ピクッとはなるかな。そんな感じ。
まず大前提、ちゃんとホラーとしても面白いです。
人形の髪が伸びるとか、ホラーの様式美もフルコースで出てきます。
そして、人形を取り巻く奇譚もしっかり語られて、その手の話が好きな自分としても満足できるものでした。

ここから微ネタバレです。でもまだ読んでOKです
ガチのネタバレはさらに下で書きます。
ここまでは、まだ読んでもいいかなという内容。
ホラーって、主人公は多くの場合、巻き込まれるっていう感じじゃないですか。あるいは、ちょっとした不注意で、入ってはいけないところに入ってしまったとか。
この映画、そこがちょっと違う。
「これ、本当は誰が悪いの?」って思わせられるような展開が続くんですよ。
判断するには情報が足りなくて、何となく人形が邪悪な力を持っていて悪さしてるのかな、と納得しながら観るしかありません。

ただ、時間がたつにつれて、もしかすると主人公の鈴木夫妻(長澤まさみと瀬戸康史)も薄っすら悪いよな、と思い始めたり疑ったりさせられる。
で、その心の揺らぎを持った状態でクライマックスに向けてさらに観ていくと、ラストがとんでもなく面白いことになります。
ホラーにもかかわらず、謎に対してちゃんと答えを用意してくれておりスッキリもします。
ホラーというジャンルは、正直なところ、物語的に面白い作品はそんなにないじゃないですか。
でも、その期待値で観に行ったとしたら、この映画は120点に感じる内容です。
気になっている方は、ぜひ観てください。
この作品、当たりです。
ということで、ここからネタバレ感想にいきます。
(以下、ネタバレです)
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- 100%分かっているのに、驚かされるシーンがある
- ここから微ネタバレです。でもまだ読んでOKです
- (以下、ネタバレです)
- 佳恵は、実は娘を信じておらず、薄っすら毒親
- 佳恵が髪を切って棺桶から逃れるシーンは、礼ちゃんの母親の無理心中の再演
- ラストのあのシーンは、「ホラー的なご都合主義」の否定
- 「ドールハウス2」があるとしたら、次はあの人が心霊に?
佳恵は、実は娘を信じておらず、薄っすら毒親

まず核心から言うと、最初に芽衣ちゃんが亡くなってしまったのは、佳恵が娘のことを信じてなかったからです。
佳恵は、外に出ちゃダメだよと注意してから買い物に行きました。
で、結果的には、芽衣ちゃんはきちんとお母さんの言うことを守って、外には出ていないんですよ。
なのに、佳恵は買い物から戻って、娘がいないことがわかるとちょっと家の中も見るんですけど、外に行ったと思い込んで探しに行ってしまいます。
ここで最初から家の中を探していたら、芽衣ちゃんは助かっていた可能性が高いです。
まずここがポイントで、佳恵は娘を信じなかった。だから、娘は亡くなったんです。

ちなみに、夫の忠彦も同じような傾向があって、時計のベルトが食いちぎられたシーンで、娘がやったと思い込んで寝ている娘の口を開いて、ベルトと歯型を合わせようとします。
常識で考えたら、子どもが時計のベルトなんか噛みちぎれるわけないじゃないですか。
間抜けなシーンですけど、これも根本的に娘を信じてないことが描かれています。
佳恵が髪を切って棺桶から逃れるシーンは、礼ちゃんの母親の無理心中の再演

礼ちゃんは母親に無理心中させられたけど、母親だけが縄が切れて助かりましたよね。
長澤まさみの髪の毛が棺桶に挟まれるシーンでは、あれをやっているんです。
佳恵が髪(縄)を切り離すことで、棺桶(死)から逃れることを示しています。
しかも、佳恵が娘よりも、結局、自分のことを大事だと思っていそうなことが、さらにここではっきりと描かれます。
佳恵は、棺桶に落としてしまった娘の遺影を拾おうとします。そこまでは良かったです。
過去に洗濯機のなかに置き去りにした娘を今度こそは、見捨てないという想いからの行動です。ここでは、棺桶が洗濯機の見立てになっているのだと思います。
ただ、問題はそのあとの佳恵の行動です。
自分の髪の毛をつかまれ、棺桶に引きずり込まれそうになったとき、こともあろうに、救いだした娘の遺影をバーンと叩き割って、そのガラスの破片で髪を切って助かるわけです。
あえてこの展開を入れているのは、佳恵が、娘を想う理想像的な母親ではない、親である前に一人の人間であるということを強調するためなのではないか。
また、礼ちゃんが生前に母親から、棒で叩きつけられる虐待を受けていたことの再演でもあるのではないか。
そんなふうに解釈しました。
あと、皮肉なのは、生前に虐待されていた礼ちゃんを母親と同じ棺桶に入れるという行為が、芽衣ちゃんの遺影を棺桶から拾うことの逆をやってしまっており、とことん救いのない展開となっていることでしょう。
ラストのあのシーンは、「ホラー的なご都合主義」の否定

ラストのほうで、芽衣ちゃんが礼の手をつないで去っていくシーンありますよね。
一瞬、感動的なシーンに見えるんですよ。
亡くなった娘が、両親のピンチに助けに来てくれて、礼の魂をいっしょに連れて行ってくれたような。
でも、その後のオチまで見ると、そうじゃないことが分かります。
結局、人形が戻ってきて、鈴木夫妻は操られているような状態になっています。
つまりあれって、ホラー作品でよくある、恨みを抱いて死んでいったと思われていた人が、実は主人公たちをゆるしていて、最後、霊だか魂だかの姿で助けに来てくれるという展開をやっているのですけど、この映画はそんなことはなくて、ちゃんと恨んでますよ、というオチなんです。
芽衣ちゃんは、お母さんの言いつけを守って、家の中でかくれんぼしていたのに、母は娘を信じずに外に出たと思いこんだ。家の中をよく探さなかったせいで、芽衣ちゃんは見殺しにされた。
二人目の子ども、真衣が生まれた時に礼が捨てられたことは、実は芽衣にとってはもう一度、見捨てられたことでもあります。
だから、芽衣ちゃんは礼とぶつかって対消滅するのではなく、親に愛してもらえなかった同じ境遇の礼ちゃんの手を取ります。
二人でいっしょにこの両親を支配する道を選ぶのです。
「ドールハウス2」があるとしたら、次はあの人が心霊に?
礼の能力って人形として動けることと、人を幻惑することじゃないですか。
途中までは、同時に一人までしか幻覚を見せるようなことはできていない気がするんですよね。
でも、ラストシーンで、佳恵と忠彦が同時におかしくなっていましたよね。
あれって、下手したら、芽衣ちゃんが第二の「礼」になったからだ、という説明もできるのかな、なんてことを思ったりもします。
自分なりの解釈をざっと書いてみました。
自分の考えがあっているかどうかは分からないですが、ホラーなんだけど、超常的なことですべてを誤魔化してはいなくて、物語的にしっかり説明されている印象を受けました。
これまでのジャパニーズホラーを、好きな人だけが観に行く閉じたジャンルじゃなくて、もっと多くの人が楽しめるメジャーなジャンルにしていこうという気概を感じた作品です。
日本を代表するトップ俳優、長澤まさみが脚本の面白さに出演を熱望した、110分間ノンストップの“ドールミステリー”
という売り文句に負けていない、見どころいっぱいの作品でした。