
ある日突然、人々の夢の中に一人の男が登場しはじめる。
そのことで男の認知度が高まり、一躍人気者になる。
大手企業から広告に出ないかと誘われるようにもなる。
ところが、これまたある日突然、これまで無害だった夢の中の男が、人々に悪夢を見せ始める。すると今度は、世間が男をバッシングし始めるのです。
理屈はとくにないまま、風刺をするための突飛な設定が舞い降りてきて、とんでもない「もしも」の世界が描かれる様は、世にも奇妙な物語やその他、小説のショートショートで描かれるような世界観を彷彿とさせます。
まず風刺ありき、の舞台設定
話の内容に対して尺が長すぎました。
104分と、映画としてはそこまで長くないけれど、プロット的には60分でもお釣りが来るような内容だと感じました。
いわゆる「アテンション・エコノミー」のような問題を扱った物語です。
知名度が高いというだけでその人の価値が高くなったように感じさせ、一方で、その知名度がひとたびネガに傾くと、何も悪いことをしていなくても世間から叩かれるという構造です。
それを極端なシチュエーションのなかで、映画的な技法を使って風刺している。
はじめに風刺ありきで、なぜそんな事象が起こるのかという舞台設定の創作がおざなりになっているため、映画として2時間近い時間を描き切る強度がないのです。
映画的な話法は、きっちり効かせている
大学教授である主人公が、冒頭に講義していたシマウマの話が象徴的でした。
群れに紛れていれば攻撃されづらい。
でも、一頭だけ目立っていたほうが異性からはモテる、と。
序盤は、さえないオジサン教授としてのポールの姿を描きます。
そして夢の効果が出始めると、若い女との棚ぼた的なSEXのチャンスにも恵まれ始めるなど、映画的な演出は巧みなので、見どころはちゃんとある作品になっています。
ただ、以下に記載する内容から、演出の巧さがエンタメに転換できてない感じがします。
中盤以降は、楽しさよりも不快さが上回る
ただ、単純な物語としての面白さは序盤から中盤で終わってしまい、終盤はゆっくりと転落していくポールの姿をジワジワなぶるように描く展開となります。
ここの部分がとても悪趣味で、正直、観ていて楽しくない。
先の展開が読めてしまって、そこに対する意外な展開もないので、ただただポールが辛い目にあうのを眺める時間が続きます。
最後の展開も皮肉たっぷりで、フッと笑えるのだけど、楽しい笑いではありません。
受け取った面白さ以上の不快感を与えられる
アリ・アスター製作の作品は、ミッドサマーに続いて観るのは2作目でした。
ミッドサマー同様、映画として面白いところは確かにあるのですが、受け取った面白さ以上の不快感を与えられるので、娯楽としては最低の体験となってしまうなぁ…というのが正直な感想です。
映画としては、なかなか興味深いので気になる方にはおすすめします。
でも、楽しくはないです。
★アリ・アスター監督作品の感想
