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『不死身ラヴァーズ』感想:エクストリームな恋愛劇を描いた意欲作。原作漫画も必ず読むべき作品

『不死身ラヴァーズ』ネタバレ感想です。原作の漫画と比較しながら、物語について語っていきます。

『不死身ラヴァーズ』感想

長谷部りのは、幼い頃に出会って一目惚れした「甲野じゅん」を探し続けていた。

そしてある日、道端ですれ違った男性が、甲野じゅんだと気づいた彼女は、いきなり告白するのだが…

という導入です。

 

本作は大きく2つのパートに別れています。

この呼び方は、私が勝手にそう言ってるだけですが、ひとつは「甲野じゅんを巡る物語」、もうひとつは「甲野じゅんとの恋物語」です。

 

あらすじ

長谷部りのは幼い頃に出会った甲野じゅんを運命の相手だと信じ、彼のことを忘れらずにいた。中学生になったりのはじゅんと再会を果たし、後輩で陸上選手の彼に思いを伝え続けるが、ついに両思いになった瞬間、彼はこつ然と消えてしまう。しかも彼がこの世に存在しなかったかのように、誰もじゅんのことを覚えていないという。その後もじゅんは、高校の軽音楽部の先輩や車椅子に乗った男性、バイト先の店主など別人となって何度もりのの前に現れ、両思いになると消えるという不思議な現象を繰り返していく。それでも諦めないりのの真っ直ぐな思いは、やがて奇跡を起こす。

映画.comより一部抜粋

前半:甲野じゅんを巡る物語

映画化するにあたって、こっちが難しかったかもしれません。

出会った甲野じゅんと両想いになった瞬間、なぜか”りの”の眼の前から甲野じゅんは消えてしまいます。

かと思えば、まったく異なるシチュエーションで、また甲野じゅんが登場し、やはりここでも彼女が告白し、2人の仲が深まることで、また甲野じゅんは消失してしまいます。

人が消えるという展開が非常に突飛なため、何らかの仕掛けが潜んでいることは予見しながら見ることになるのですが、これに関してのオチはちょっと弱めです。

まぁ分かるけどなぁ…という感じ。

後半:甲野じゅんとの恋物語

前半は個人的にいまいち面白くなかったのですが、このあとの展開を観ると、前半のパートが、後半のシナリオに意味的なつながりを持っていることは理解できました。

 

何度目かの「甲野じゅん」との出会いを経て、ついに”りの”は、本物の甲野じゅんと出会うことになります。

しかし、甲野じゅんは昔の事故の後遺症が再発し、1日しか記憶を保つことができないというのです。


そんな中でも”りの”は、甲野じゅんを毎朝迎えに行き、毎日告白して、毎日付き合ってという日々を重ねていきます。

仲良くなっても次の日にはリセットされているわけで、内容的にはなかなかキツイ話なのですが、主人公の”りの”が、甲野じゅんに対して突き抜けた愛情を持っている人として漫画的に描かれるので、そんなに辛くなく観れました。

 

前半のパートで散々繰り返された「"りの"が愛した甲野じゅんが消える」というシークエンスは、この後半の展開の、メタファーのような構造になっています。

つまり、「甲野じゅんの記憶が1日で消えてしまうこと」=「甲野じゅんが消える」と、重ね合わせて解釈することができるわけです。

愛した人が消えるという悲劇のサイクルを、彼女は、本物の甲野じゅんと出会ったあとも繰り返し続けていることが示されています。

ラストの解釈がちょっと難しい

本作、話の筋はシンプルです。

”りの”が、甲野じゅんとの茨の道とも思える恋を貫き通していく物語です。

ただ、ラストシーンがやや唐突かつ説明が少ないので、「で、結局どういうこと?」となりそうな終わり方になっています。

 

最後は、”りの”がおばあさんになっていて、彼女が庭に歩いていくと、大学生の頃の見た目をした甲野じゅんが立っている。

そして、”りの”の姿も若かった頃に逆戻りして、2人で笑い合うというシーンが描かれて終幕となります。

2人は最後まで添い遂げた、が答え

ラストシーンは、抽象的な表現となり解釈が必要ですが、ここでは2人が結婚して、年老いるまでずっと一緒に生活を続けてきたことが描かれています。

2人が若返って描かれるのは、映画的に解釈するならば、彼の記憶が大学生のあの時で止まっていることを表しているとも言えるでしょう(実は違うので、詳細は後述します)

 

たいへん分かりにくいですが、部屋には彼が告白のときにプレゼントする「花」が押し花としてたくさん保管されている様子も描かれています。

数え切れないくらいの告白を、あれから2人が積み重ねてきたことが描かれているのです。

ここ、ホントはむちゃくちゃ感動するところのはずなんです。

でも、映画での描き方が解釈を必要とするような淡さで、2人の過ごしてきた数十年の年月が、ストレートに胸に響いてこないのが実にもったいないと感じました。

あまりに原作が「出来すぎ」ていて、映画化のハードルは高かった

本作は、原作漫画の出来が良すぎるので、ぜひ読んでもらいたいです。

とっても言いづらいのだけど、映画より漫画のほうがテンポもいいし、感動もします。

実はラストの展開についても、原作漫画を読むと完全に答えが出ておりスッキリできます。

映画版のラストは、実は、2人が天寿をまっとうして亡くなったことが描かれているんです(霊になると若い頃の姿に戻る演出ってありますよね。あれです)

 

漫画は無料で読めちゃうので、お時間ある方はぜひ読んだほうがいいと思います。

原作は男女の役割が逆転して描かれています。

不死身ラヴァーズ | 【特別読み切り】 / マガポケ | 少年マガジン公式無料漫画アプリ

 

映画では最後、いっきに時間がすぎさって、”りの”がおばあさんになった一瞬だけ描かれて終わりますが、漫画では2人が歳を重ねていく様子も描かれています。

そして、2人の関係が恋から愛へと移り変わっていく、映画では描かれていない部分こそが、物語の一番の見どころでもあるように感じました。

自分のことを覚えてくれない人を愛し続けることの幸せさと辛さが、複雑に絡み合って、でもそれが深刻になりすぎない絶妙なタッチで表現されています。

 

映画を観て「もうちょっと情報ください…」となった人は、絶対に原作漫画を読んだほうがいいので、強くお勧めします。

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