
ドキュメンタリーの一つの方向として、不都合な真実が白日の元にさらされる展開があると思います。
本作はまさしくその流れを踏襲しています。
ニューヨークで伝説的な人気を博したレンタルビデオショップ「Kim's Video and Music」の閉店に際して、イタリアの自治体が一般へのコレクションの公開などを条件に大量のビデオテープを譲り受けます。
しかし、政治的な混乱の果てに、約束は果たされずビデオテープは劣悪な環境で保管されていることが分かります。
ここからの製作者デビッド・レッドモンのアプローチが実に破天荒。
映画の撮影と偽って、倉庫からビデオテープを奪還してしまう…!
劇中では、その作戦を映画『アルゴ』にたとえていたが、そんな良いものではないでしょう。
むしろ、オーシャンズ11などの泥棒の手口と見たほうがしっくり来る。
ただ、本人がアルゴを引き合いに出している時点で、自分の行いを客観視できていないことが図らずも明示されてしまうという、皮肉にも映画的な面白さが演出されてしまっていることには苦笑するほかない。
実際には、ビデオの譲渡時に、キムズビデオの元会員はビデオを無償で借りれるという約束がされていたので、持ち出した時点では「借りている」という方便でやっていたみたいですね。
にしてもよ。
一歩間違えば、迷惑系YOUTUBERというか、ただの犯罪者のような行為を正当化していいのか悪いのか、すげー微妙な内容。
このあたり、「映画愛ってそういうこと?違うでしょ…」と感じた映画ファンも多かったのではなかろうか。
本作は様々な過去の名作から映像が引用されており、製作者の言葉や心情を代弁させる役割を担っているのだが、いわゆる言葉やセリフを当てはめただけの軽薄な引用に見える点も多い。
アルゴの例が顕著だが、真にその映画のメッセージとドキュメンタリーの内容がリンクしているかといえば、それはどうかなという感じ。
本当にこの人、映画好きなの?という疑問が拭えず、手放して称賛できる作品ではないと感じてしまいました。好きのベクトルが、自分の思っている道とは違うことは確かだった。
ただし、本作で示された一連の行動を、映画文化を守るための勇気ある行動と捉えれば合点はいくし、高評価も頷けると思いました。
プロローグのニューヨークの街並みのファーストショットには心躍りました。序盤は面白かったんですけどね。
イタリアのサレーミで、ビデオが雑に保管されていることが発覚した瞬間がピークでした。
そこから先は、結末は気になるけど、上記のような理由もあって、純粋には楽しめない時間が続いてしまった感じです。
ただ、個人的に思想的なミスマッチがあっただけで、映画としては悪いものではなかったと思います。

