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『ロブスター』感想:最後のオチが好き。大真面目にふざけた怪作。

ヨルゴス・ランティモス監督の映画『ロブスター』ネタバレ感想。タイトルの意味や物語の構造、ラストの真相についてなど解説しています。

『ロブスター』感想

本作は「コメディ」であると、知った上で観たほうが良い作品。

独身者は施設に強制送致されて、そこでパートナーを見つけることを強要されるというディストピア世界が舞台。

外国人が演じているから、コメディなのにシリアス劇と勘違いしてしまいそうになりますが、同じ内容を日本人が演じていたら、間違いなくシュール系のコメディに見える内容です。

「大真面目にふざけている作品」だと割り切って観るなら、なかなか愉快な怪作だと思いました。

 

あらすじ

独身者は身柄を確保されてホテルに送り込まれ、そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、動物に変えられて森に放たれるという近未来。独り身のデビッドもホテルへと送られるが、そこで狂気の日常を目の当たりにし、ほどなくして独り者たちが隠れ住む森へと逃げ出す。デビッドはそこで恋に落ちるが、それは独り者たちのルールに違反する行為だった。

映画.comより一部抜粋

カップル文化の誇張と既婚と未婚の対立

独身者は拘束されて施設に送られ、そこでカップル成立しないと動物に変えられるという設定は、「カップル文化の誇張と既婚・未婚の対立」を風刺したものです。

独身がゆるされない社会の風潮を大げさに描いたもので、独身者が動物に変えられる設定は、「独り身は人間扱いされない」という現実の、最大級の誇張表現です。

独身者を「狩る」のも、結婚主義と独身主義の対立を映したものなのでしょう。

デビッドはなぜ「ロブスター」になりたい?

想像しかできないけど、どうやらロブスターって超長寿で、生殖機能もずっと衰えない生き物らしいです。

脱皮を繰り返すことで、長く力強く生きられる。

ある意味で、男性の考えるグロテスクな欲望を体現した生物がロブスターだと言えます。

ただ、ロブスターは脱皮のときに自分の殻から抜け出せなくて死んでしまうことがあるらしく、本作におけるデビッドがたどり着く顛末も、ある意味でロブスターが陥るこの状況に似ていると言えなくもない感じです。

共通点探しに異常にこだわる人々

ホテルに集められた人たちは、相手との共通点探しに奔走します。

これは現実の恋愛が、共通項から始まりやすいことを極端に描いたものです。

鼻血が出やすい女性とカップルになるために、ある男性は壁に鼻を撃ちつけて鼻血を出していましたが、あれは「ディズニーが好き」と言っている女性に気に入られたくて、自分もディズニーが好きと装うことの過剰表現なのだと考えると、バカバカしいけど笑えます。

近視という共通点で結ばれた二人

ホテルから逃げ出したデビッドは、独身者の集団に参加します。

結婚を志す人々はホテルでパーティ三昧なのに、独身者の集団は、森で隠遁生活をしているのも、もちろんタチの悪いジョークでしょう。

そこで彼は、自分と同じ近視の女性と出会い恋に落ちます。

近視の女性などという、それ共通点なの?とツッコミたくなる条件に固執する展開もなかなかひどい(笑)

恋は盲目

独身者集団のリーダーは、規律を乱す2人を別れさせるために、近視の女性にレーシック手術を受けさせます。

彼女が近視じゃなくなったら2人は別れるだろう、という発想なんですね(笑)

ところが、レーシックだと思いきや、どうやら手術は彼女を失明させるためのものだったようで、彼女は目が見えなくなってしまいます。

近視という共通点を失ったデビッドは新たな共通点を見つけようとしますが、見つかりません。

 

そしてデビッドはある「名案」を思いつきます。

集団を離れ、街に逃げ伸びた2人はレストランに入店。

なんとデビッドは、彼女と同じ状態になるために、トイレで自分の目を抉ろうとするのです。

ここは映像的に、観るのがけっこうキツいシーンでした。

苦手な人には辛い時間。

なんでこんな展開になるのかと言うと、たぶんですけど、これは「恋は盲目」を比喩ではなくそのまま表現するという皮肉なんだろうと思います。

オチは笑えないくらい残酷だが、映画的でもある

本作は、最後のオチがなかなか残酷で、席に座って彼を待つ女性のふるまいから、彼女が実は目が見えている可能性が示唆されます…!(明示はされませんが、自分には彼女の目は見えていると感じました…)

ウェイターへの視線のやり方や店の外を何気なく見てしまう動きなどから、そうとしか思えませんでした。

だとすると、彼女を失明させたと思われる手術シーンは、やはり単なるレーシック手術だったのかもしれませんね。

 

もしそうだとすると、盲目ではなくなった彼女の恋は冷めたと考えられます。

むしろ、物語的には因果が逆で「恋が冷めたから、目が視えるようになった」と考えるのが正しいのかもしれません。

結局、デビッドが本当に目を抉ったかどうかは描かれません。

いったい2人はどうなってしまうのでしょうか…、余韻あるラストショットです。

途中はずっと暴走気味な展開だったのに、ラストで突如、切れ味のある締め方をしたことに痺れました。

素晴らしい終わらせ方だったと思います。

 

★ヨルゴス・ランティモス監督作品 感想