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『脛擦りの森』感想:せめて寓話にしてくれれば…

『脛擦りの森』ネタバレ感想です。

『脛擦りの森』感想

「岸辺露伴は動かない」シリーズの監督・渡辺一貴と主演・高橋一生が組んだオリジナル作品。

岡山県に伝わる妖怪、脛擦りを映像化した作品とのことだが、これを映画と呼んでいいのか戸惑いがある。

脚本があまりにも素朴かつ予定調和すぎる。

現代の何かを映した寓話として仕立てられているわけでもなく、ただ「脛擦り」の伝承をアレンジした物語がなぞられるのみだ。

本作は1時間と短いが、この内容であれば半分の30分くらいでも充分だと思った。

ずっとここに…、居た……くない

足を怪我した男(黒崎煌代)は、不思議な洞窟を見つけ、その先にあった古民家の主人(高橋一生)の好意でしばし逗留する。

怪談のセオリーを知っている人であれば、男がふるまわれた食事に手を付けるシーンや「ずっとここに居たい」と口にしてしまうシーンなどは、あぁやっちまったな、と怪談ならではのお約束の踏襲を感じられることだろう。

彼から妻だと紹介された女性は、主人と比べて明らかに若すぎる。

この時点でもう、結末の想像はついてしまう。

想像できるからダメではないのだが、驚くようなことが何もない時間がこのあと40分くらい続くのは長すぎる。

本作はほとんどセリフもなく、静謐な時間が淡々と流れていく。

観客にも、男と同じように異世界に迷い込んだ感覚を与えたい意図は理解するが、自分としては退屈が勝ってしまい、この世界にずっと居たいとは思えなかった。

 

男は、手当をしてくれた主人の若妻に恋心を抱いていた。

彼の「ここに居たさ」に、その恋心は影響しているだろう。

しかし、観客の立場から彼女に一目ぼれするのはかなり難しい。

女性は、この世ならざる妖艶な美女というタイプではないし、そもそも2人の間には、親しくなるためのそれらしき会話すらない。

タイトルの通り、毎夜、彼の脛に触れる描写は繰り返されるが…。

 

映像に凝っているのは分かる。

男とかつての若かりし頃の主人が、怪異に囚われるまでの経緯を同一のカットを重ねて反復させる手法などは、意図した演出だろうと思う。

ただ、それ自体はよくある手法なので、アート映画としても評価はできない。

岸辺露伴シリーズのようなノワール展開に期待していた人にとっては、期待と異なる作品となったのではないだろうか。

映画と呼ぶには、少し要素が足りない作品だった。